2010年01月25日

市民討議会の現状とこれから

市民討議会推進ネットワークの吉田純夫です。

市民討議会という手法を広く広げていくために活動をしています。
市民討議会は無作為抽出で選ばれた市民(国民)が公共的課題に対し討議し、意見の傾向を行政の計画作りの参考にする取り組みで、従前の市民参加に比べ今まで参加機会のなかった多様な属性の市民意見から平均的な市民の意見傾向を提言としてまとめるものです。サイレントマジョリティーの意見がわかるというメリットもあります。

2005年から始まった市民討議会も昨年までで延べ約100の開催が実現されました。
ひろがる一方、課題も多くなってきました。
本年からブログを始めることになりました。HPでお伝えできない日々の動向や個人的に考えたことや思ったことを書いていこうと思っています。

年初に寄稿した原稿の一部を現状ということでご紹介したいと思います。


 


 日本では2000年に地方分権一括法が施行され、中央政府と地方自治体、および市民の関係が大きく変化した。自治体行政と市民というこれまでの対立的な関係に対し、市民と自治体がお互いに協力し接近する「協働」という新しい行動様式が普及・定着することによって、今後、自治体と市民双方による、また、ローカルレベルにおける問題解決の方法が模索され、そして市民活動や市民参加を通して日本の社会における「市民主義」がさらに推進されて行くかどうかが問われている。このような現状のなか、各自治体では市民との協働のまちづくりを推進するための様々な取り組みが行われている。しかしその多くは審議会であれ市民会議であれ公募型を採用しており、参加の意欲と機会がある限られた市民参加になりがちで、平均的な市民の意見とは乖離があることが懸念される。現在、日本各地で「市民討議会」が開催されている。そこでは、住民基本台帳から無作為で抽出された一般市民が、地域の公共的課題について熱心に討議し、その解決策を探っている。これまで、自治体職員など専門家が考え、政治家によって決定されるとばかり考えてきた公共的問題を、そこに住む普通の人々が、年齢、職業、性別などを問わず、互いに真剣に語り合い、“みんなの問題”として解決策を考えている。その姿は、行政、政治家、専門家に対しても新しい市民像を与えようとしている。05年には1件だった開催事例も、06年には3件、07年には19件、そして08年には関東から東海地区や北海道に広がり28件開催され、その後全国へ拡がり20091231日現在で当会が把握しているだけでも、64の地域で延べ回数は90件を超えるまでになっている。今後も急速な広がりを見せており、多数の自治体での開催が予定されている。開催主催のタイプは、青年会議所などを中心とした市民団体の単独開催、行政との共催、そして行政単独の開催の大きく3つに分けられるが、現在は圧倒的に行政共催のタイプが多く、市民参加における「協働」に開催目的の重点を置いている自治体が多く見受けられる。また、いずれの事例も報告書をまとめ、市民提言として行政に提出し、施策反映を目指しているところが共通している。 開催する目的も、初回の取り組みの場合は新しい市民参加手法の検証・評価が多く、2回目3回目と回を重ねるごとに目的が変化し、広聴手法として継続的に開催する自治体もあれば、様々な計画策定のプロセスとして導入する自治体も多くなってきている。 この取り組みは20041月に出版された「市民の政治学」(篠原一東京大学名誉教授著)に紹介されたドイツのプラーヌンクスツェレという手法をもとに開発され、大きな注目を集めた。

少しずつ調査・研究され始めた市民討議会は、まだ生まれたばかりであり、多くの課題を示している。しかし、現在進行する地方分権、地方自治体改革に流れの中で、「住民自治を拓く可能性」において、今後大きな意味を持つものと思われる。つまり、住民自治の基礎である「討議の公共空間」の形成に寄与する可能性である。住民が行政と協働し「新しい公共空間」を形成していく上でも、まず、多くの住民が公共的課題に直接関係し考える契機がなければならない。今日の社会の閉塞感は、単に政治家・行政組織の問題ではない。社会を構成する住民一人ひとりが信頼・連帯のベースを失ってバラバラになっていることに起因する。その意味で、市民討議会で垣間見られる「市民の力」は、もっと大きな意味があるように思われる。

日本の政治状況は、地方分権・地域主権型への転換など大きな過渡期を迎えている。「観客民主主義」「劇場型政治」の進展など、市民と政治を直接結びつけるチャンネルがますます必要になってきている。市民討議会は、その具体的ツールとして開発されてきたものであり、今後継続的に行われるためには、市民討議の本来的意義をしっかり考えながら、課題の判断や解決なども含む多様なテーマに取り組み、また、市民の声でまちが変わることが実感できることが必要である。

開催事例が増え、適用範囲が拡大する中、今後は議会やローカルマニフェストとの関係を整理して行く事が課題になってきている。
posted by 吉田純夫 at 01:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
豊田市議会議員の岩月幸雄と申します。議会制民主主義(間接民主議)を補完する機能として「市民党議会」について強く興味を惹かれました。
私自身は、地域の推薦で議会に出させていただいている保守系の市議ですが、地域の利益に縛られ大局的な発言や行動を自粛している歯がゆさを感じております。
実体のない「地域の意見を市政に反映する。地域と行政のパイプ役として議会に送っていただきたい。」と選挙では訴えて当選してきました。個人的な意見とか、狭い範囲の道路整備など限定された要望を除き、地域から市政に対する意見を聞かせていただいたことはあまりありません。
市議会において議決する内容について、市政報告会で話してもあまり興味は持っていただけず、意見として出されるのは、近くに総合病院を作って欲しいとか、鉄道駅の周辺を開発して欲しいとかの要望が優先されてしまします。
一方、豊田市では都市内分権として地域自治区に地域会議を設置して市民参加を進めていますが、自治区(=町内会)区長・役員および地域団体の役員などが主体の委員構成で、女性・若者は言うに及ばず現役世代も少なく、地域全体の意見集約とはかなり距離があるように思えます。
4年に1回の選挙だけでは、個別の課題に対する市民の意見を聴く機会にはならず、市民の代表としての議会本来の機能を発揮するには、より市民の広範な意見が聞ける可能性の高い「市民討議会」を活用する方法がないかと興味を寄せているところです。即ち、個別の課題について、「市民討議会」での意見を議会審議の参考にさせていただく。市民討議会の開催・運営に議会としても積極的に関わっていく道はないかと思う次第です。もちろん、市民の発言を議会が制限するようなことが無いのが大前提ですが。
議会・議員が市民の代表として議案審議に臨み、自治体の意思決定機関としての役割を果たすために「市民討議会」の内容は大変重要で価値があるものと思えるからです。
Posted by 岩月幸雄 at 2012年03月26日 16:45
コメントありがとうございます。
議会発議の市民討議会を是非ご検討いただければと存じます。以前よりCDPNでは議会改革の一手法として提案しているところです。平成22年には新宿区(区長)と新宿区議会の共催で自治基本条例に向けて行った事例がありますが、議会単独では今のところ事例は無いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by 吉田純夫 at 2012年03月27日 12:21
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